空蝉の秘密基地
「なあヒロト、秘密基地行こうぜ」
真っ白な作文ノートとにらめっこをしているタイリクが言った。
「…なんだよ、それよりお前宿題が先だろ。あと一週間だぞ」
「いや、まだ一週間あるんだぜ!いけるだろ!」
「そんなんだからいつも先生に注意されてんだよ、お前どこまで楽観的なの」
「お前こそ進捗はどうなんだよ?」
「…あと数学の問題集だけ。」
「なんだよ〜、お前だって終わってねぇじゃん!終わってないやつに注意なんかされたくねぇし!!」
「…はいはい。」
「タイリクくん、お菓子あるわよ。食べる?」
ドア越しに、いつもより高い母の声がする。
「えー!!いいんすか!?あざぁーす!!」
タイリクは飛び上がってドアを開け、袋菓子を受け取った。
「母さん、それ俺が買ったやつなんだけど?」
「いいじゃない、タイリクくんと一緒に食べなさい!」
「なははは!ヒロトごちそうさまでーす!!」
「はぁー最悪…」
「なぁー、ヒロト」
「…何」
「お前いつまでしかめっ面してんだよ。そんなにお菓子独り占めしたかったのか?」
…俺、しかめっ面、してたのか……
「いや。なんでも」
「…もしかして、またアキモトのことか」
「……」
「そうだよな、今日、15日だもんな。思い出さないわけねぇよな」
「…別に。」
数分の沈黙。タイリクの顔はいつにも増して真剣だった。
「なぁ、ヒロト。」
「…しつこいよ。何」
「やっぱり、秘密基地行こうよ。二人であいつの抜け殻探しに、一緒にさ」
「今更そんなことできない。だし、今日は一日中勉強会って、お前が決めたんだろ」
「今日じゃなくてもいい。夏休みが終わる前に行かなきゃ、アキモトとの約束はどうしたんだよ」
「約束なんてどうでもいいよ。今は宿題が先だ、一緒に終わらせるって決まりだろ」
「…お前さ!!昔っからそういうとこ、ほんっとに変わんねぇよな!!」
立ち上がったタイリクが怒鳴った。
「俺たちの約束とか、秘密とか、一つも守んねぇし!いっつも宿題だの決まりだの、
なんだよ、友達よりルールかよ!!」
「…当たり前だろ!俺はお前らみてぇに能天気になる暇はねぇし、秘密基地とか…もう中学生だぞ!
まだそんなガキみたいなことしたがってんのかよ!」
「もういい!お前とはもう口きかねぇ!一人でずっとアキモトのこと抱えて苦しんでろよ!!」
「ほっとけよ!!お前だって昔からそういうめんどくさいとこ変わってねぇくせに!!」
タイリクは、鼻息を荒くしながら荷物を片付け始めた。
「…もういい、帰る」
「好きにしろよ」
タイリクの「お世話になりました」という声を遠く聞きながら、シャーペンを強めに握った。
「ヒロト、あんたタイリク君と喧嘩したでしょ!聞こえてたわよ!?」
「…頼むから一人にさせてくれよ」
机の中にはまだ、あの時のセミの抜け殻が残っている。三人で交わした約束の証。
引き出しから抜け殻を出して少し眺めた後、
俺はそれを指で粉々につぶした。
八月十五日、アキモトは秘密基地で亡くなった。 ことりこさん(沖縄・13さい)からの相談
とうこう日:2024年8月15日みんなの答え:0件
真っ白な作文ノートとにらめっこをしているタイリクが言った。
「…なんだよ、それよりお前宿題が先だろ。あと一週間だぞ」
「いや、まだ一週間あるんだぜ!いけるだろ!」
「そんなんだからいつも先生に注意されてんだよ、お前どこまで楽観的なの」
「お前こそ進捗はどうなんだよ?」
「…あと数学の問題集だけ。」
「なんだよ〜、お前だって終わってねぇじゃん!終わってないやつに注意なんかされたくねぇし!!」
「…はいはい。」
「タイリクくん、お菓子あるわよ。食べる?」
ドア越しに、いつもより高い母の声がする。
「えー!!いいんすか!?あざぁーす!!」
タイリクは飛び上がってドアを開け、袋菓子を受け取った。
「母さん、それ俺が買ったやつなんだけど?」
「いいじゃない、タイリクくんと一緒に食べなさい!」
「なははは!ヒロトごちそうさまでーす!!」
「はぁー最悪…」
「なぁー、ヒロト」
「…何」
「お前いつまでしかめっ面してんだよ。そんなにお菓子独り占めしたかったのか?」
…俺、しかめっ面、してたのか……
「いや。なんでも」
「…もしかして、またアキモトのことか」
「……」
「そうだよな、今日、15日だもんな。思い出さないわけねぇよな」
「…別に。」
数分の沈黙。タイリクの顔はいつにも増して真剣だった。
「なぁ、ヒロト。」
「…しつこいよ。何」
「やっぱり、秘密基地行こうよ。二人であいつの抜け殻探しに、一緒にさ」
「今更そんなことできない。だし、今日は一日中勉強会って、お前が決めたんだろ」
「今日じゃなくてもいい。夏休みが終わる前に行かなきゃ、アキモトとの約束はどうしたんだよ」
「約束なんてどうでもいいよ。今は宿題が先だ、一緒に終わらせるって決まりだろ」
「…お前さ!!昔っからそういうとこ、ほんっとに変わんねぇよな!!」
立ち上がったタイリクが怒鳴った。
「俺たちの約束とか、秘密とか、一つも守んねぇし!いっつも宿題だの決まりだの、
なんだよ、友達よりルールかよ!!」
「…当たり前だろ!俺はお前らみてぇに能天気になる暇はねぇし、秘密基地とか…もう中学生だぞ!
まだそんなガキみたいなことしたがってんのかよ!」
「もういい!お前とはもう口きかねぇ!一人でずっとアキモトのこと抱えて苦しんでろよ!!」
「ほっとけよ!!お前だって昔からそういうめんどくさいとこ変わってねぇくせに!!」
タイリクは、鼻息を荒くしながら荷物を片付け始めた。
「…もういい、帰る」
「好きにしろよ」
タイリクの「お世話になりました」という声を遠く聞きながら、シャーペンを強めに握った。
「ヒロト、あんたタイリク君と喧嘩したでしょ!聞こえてたわよ!?」
「…頼むから一人にさせてくれよ」
机の中にはまだ、あの時のセミの抜け殻が残っている。三人で交わした約束の証。
引き出しから抜け殻を出して少し眺めた後、
俺はそれを指で粉々につぶした。
八月十五日、アキモトは秘密基地で亡くなった。 ことりこさん(沖縄・13さい)からの相談
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