補習でよく見るあの子の名前は。
私は中学三年生、バレー部部長の花吹琉璃。
赤点王と、友人からは呼ばれており、その名の通り勉強が苦手だ。
でも運動神経はずば抜けていいと言えると思う。
今日も補習室の前に立つ私。
ため息はつきながら教室に入る。
黒板には『職員会議の為教師不在』と書かれていた。
ラッキーと口角を上げていると、奥の方でテストをしている男子生徒がいた。
銀髪とジャラジャラ付けているピアスが特徴的。
すごく美形だけど、悪い噂が絶えず、皆から怖がられているらしい。
いつもいる、見慣れた子。こっそり補習君と呼んでいた。
テスト用紙を手に持ち、補習君の隣に座る。
あ〜分かんない!
さっぱりだよ。
シャーペンを放り出し、大きく伸びをする。
ちらっと補習君の方を見る。何だか今日は集中できない。
話しかけてみたい、という、好奇心が芽生えてきた。
「ねえ」
補習君の肩をとん、と叩くと、
「ああ?」
と低い声が返ってきた。
「君、いつも補習にいるでしょ。知ってるんだからね」
補習君は不思議そうに私を見つめ、ふんっと鼻で笑った。
「そういうあんたもだろ」
「っ、私より頭悪いでしょ!」
「どうかな」
補習君は悪戯気に笑うと、テストをひらひら〜としながら見せてくる。
「なっ!?」
問題は全て解けており、よく分からないけれど全部あってると思う。
「なんで!?いつも学校来てないじゃん!」
「だからって頭わりぃわけじゃねぇよ。」
補習君はいつも学校にはきてなくて、補習の時間だけ来ているらしい。
放課後だし、人が少ないからという理由で。
「俺、終わったから帰るけど」
「待ってよ〜!私終わんないよ」
「それは自分のせいだろ」
と苦笑しながら、補習くんは携帯を取り出し、画面を触りだした。
「ねえ補習君」
言ってからハッとした。
今、補習くんって言っちゃった!
「補習君?」
補習君が携帯を机に置き、聞き返してくる。
「あ、えっその、ずっと補習の時間に居るから、勝手に自分の中でよんでた!」
誤魔化すのは無駄、という判断が下ったので、素直にそういう。
「ぶっ」
補習君は腹を抱えて笑い出した。
目に涙を浮かべながら。
「はははっ、んだよそれ、ははっ」
どきんとする。
補習君が、笑った。
いつも狼の様に人を睨み、壁を作り、恐れられている人。
でも、こんなにも笑顔が可愛い。
「はーっ、俺は氷河楼だよ」
目頭を押さえつけながら、補習君は言う。
「氷河楼…」
「あんたは?」
「へ?」
「あんたの名前」
笑い疲れたらしく、机につっぷした補習く…いや、楼君が言う。
「私は花吹琉璃」
「へえ」
楼君がじっとこっちを見つめてきて、顏に熱が籠ってくる。
楼君の瞳には、赤くなった私が写っている。
「な、なに…?」
「あんた、面白いな」
楼君は立ち上がり、私の前にしゃがんだ。
そして、私の長い黒髪の毛先を触る。
「は…?」
「髪も綺麗」
どくんどくんと心臓が鳴る。
「俺の噂、聞いた事ある?」
「えっ、あるけど」
夜遅くまで遊んで、警察沙汰になったという噂。
「じゃ何で話しかけてきたの」
「だって噂でしょ、本当か何て分かんないよ」
「俺の事、怖くなかった?」
「そんなの話してみないと分かんないでしょ」
きょとんと言い返すと、楼君は目を見開き、そして優しく微笑んだ。
心臓が締め付けられる。
何、この感覚。
「ありがと。俺さ、母さん世話してんだ」
楼君はしゃがんだまま、話始める。
「母さん、体悪くて。俺が見といてやんなきゃいけねぇ。妹も」
じゃあ、噂は本当じゃなかったの?
そんなの、大変すぎるよ。
「俺さ、あんたの事好きになっちった」
どくんっと心臓が鳴った。
「こんな感覚初めてだけど、あんたの事誰にも渡したくねぇ」
好き。そうだ、私も楼君が好きなんだ。
楼君の笑顔、自分の物だけにしたい。
「私も…好きになっちゃったよ」
楼君は目を見開き、犬みたいに笑った。
「一日で実る事あんてあんのか」
「奇跡だね。初彼氏が楼君でよかった」
「彼氏…。そっか、彼氏になんのか、俺。」
二人だけの教室に、夕陽が差し込む。
「そうだよ、でも一つだけお願いがあるの」
「何?」
「家の事、私にも手伝わしてほしい。何でもするから」
楼君はまたもや目を見開く。
「何で」
「だって私、楼君の彼女だもん」
と笑うと、楼君は力の抜けた笑顔で笑った。
「ありがとう」
楼君は立ち上がり、髪を耳にかけてくれる。
そして。
「琉璃、好きだよ」
と私の唇に蓋をした。
初めての感覚。
楼君の香り。
二人だけの教室に差し込む夕陽。
私はその日、初めての恋心とキスを、補習でよく見るあの子に委ねた。 き る .さん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2024年7月21日みんなの答え:1件
赤点王と、友人からは呼ばれており、その名の通り勉強が苦手だ。
でも運動神経はずば抜けていいと言えると思う。
今日も補習室の前に立つ私。
ため息はつきながら教室に入る。
黒板には『職員会議の為教師不在』と書かれていた。
ラッキーと口角を上げていると、奥の方でテストをしている男子生徒がいた。
銀髪とジャラジャラ付けているピアスが特徴的。
すごく美形だけど、悪い噂が絶えず、皆から怖がられているらしい。
いつもいる、見慣れた子。こっそり補習君と呼んでいた。
テスト用紙を手に持ち、補習君の隣に座る。
あ〜分かんない!
さっぱりだよ。
シャーペンを放り出し、大きく伸びをする。
ちらっと補習君の方を見る。何だか今日は集中できない。
話しかけてみたい、という、好奇心が芽生えてきた。
「ねえ」
補習君の肩をとん、と叩くと、
「ああ?」
と低い声が返ってきた。
「君、いつも補習にいるでしょ。知ってるんだからね」
補習君は不思議そうに私を見つめ、ふんっと鼻で笑った。
「そういうあんたもだろ」
「っ、私より頭悪いでしょ!」
「どうかな」
補習君は悪戯気に笑うと、テストをひらひら〜としながら見せてくる。
「なっ!?」
問題は全て解けており、よく分からないけれど全部あってると思う。
「なんで!?いつも学校来てないじゃん!」
「だからって頭わりぃわけじゃねぇよ。」
補習君はいつも学校にはきてなくて、補習の時間だけ来ているらしい。
放課後だし、人が少ないからという理由で。
「俺、終わったから帰るけど」
「待ってよ〜!私終わんないよ」
「それは自分のせいだろ」
と苦笑しながら、補習くんは携帯を取り出し、画面を触りだした。
「ねえ補習君」
言ってからハッとした。
今、補習くんって言っちゃった!
「補習君?」
補習君が携帯を机に置き、聞き返してくる。
「あ、えっその、ずっと補習の時間に居るから、勝手に自分の中でよんでた!」
誤魔化すのは無駄、という判断が下ったので、素直にそういう。
「ぶっ」
補習君は腹を抱えて笑い出した。
目に涙を浮かべながら。
「はははっ、んだよそれ、ははっ」
どきんとする。
補習君が、笑った。
いつも狼の様に人を睨み、壁を作り、恐れられている人。
でも、こんなにも笑顔が可愛い。
「はーっ、俺は氷河楼だよ」
目頭を押さえつけながら、補習君は言う。
「氷河楼…」
「あんたは?」
「へ?」
「あんたの名前」
笑い疲れたらしく、机につっぷした補習く…いや、楼君が言う。
「私は花吹琉璃」
「へえ」
楼君がじっとこっちを見つめてきて、顏に熱が籠ってくる。
楼君の瞳には、赤くなった私が写っている。
「な、なに…?」
「あんた、面白いな」
楼君は立ち上がり、私の前にしゃがんだ。
そして、私の長い黒髪の毛先を触る。
「は…?」
「髪も綺麗」
どくんどくんと心臓が鳴る。
「俺の噂、聞いた事ある?」
「えっ、あるけど」
夜遅くまで遊んで、警察沙汰になったという噂。
「じゃ何で話しかけてきたの」
「だって噂でしょ、本当か何て分かんないよ」
「俺の事、怖くなかった?」
「そんなの話してみないと分かんないでしょ」
きょとんと言い返すと、楼君は目を見開き、そして優しく微笑んだ。
心臓が締め付けられる。
何、この感覚。
「ありがと。俺さ、母さん世話してんだ」
楼君はしゃがんだまま、話始める。
「母さん、体悪くて。俺が見といてやんなきゃいけねぇ。妹も」
じゃあ、噂は本当じゃなかったの?
そんなの、大変すぎるよ。
「俺さ、あんたの事好きになっちった」
どくんっと心臓が鳴った。
「こんな感覚初めてだけど、あんたの事誰にも渡したくねぇ」
好き。そうだ、私も楼君が好きなんだ。
楼君の笑顔、自分の物だけにしたい。
「私も…好きになっちゃったよ」
楼君は目を見開き、犬みたいに笑った。
「一日で実る事あんてあんのか」
「奇跡だね。初彼氏が楼君でよかった」
「彼氏…。そっか、彼氏になんのか、俺。」
二人だけの教室に、夕陽が差し込む。
「そうだよ、でも一つだけお願いがあるの」
「何?」
「家の事、私にも手伝わしてほしい。何でもするから」
楼君はまたもや目を見開く。
「何で」
「だって私、楼君の彼女だもん」
と笑うと、楼君は力の抜けた笑顔で笑った。
「ありがとう」
楼君は立ち上がり、髪を耳にかけてくれる。
そして。
「琉璃、好きだよ」
と私の唇に蓋をした。
初めての感覚。
楼君の香り。
二人だけの教室に差し込む夕陽。
私はその日、初めての恋心とキスを、補習でよく見るあの子に委ねた。 き る .さん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2024年7月21日みんなの答え:1件

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いい話! ヤッホー!!みんなにとって今日1日良い日になりますように!虹色花火だよ!
本題
とてもいい話でした!
ありがとうございました! 虹色花火(元花火君、レインボー君)さん(神奈川・11さい)からの答え
とうこう日:2024年10月27日
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