いつかまた、雨の降るこの場所で。
私は1人の男の子に恋をした。
かっこよくて、面白くて、優しくて、そして誰よりも雨が好きな君に。
「愛芽ー!かえろー!」
ひょいと教室の後ろのドアから顔をのぞかせたのは、親友の優奈。私はスマホの天気アプリを閉じ、椅子から立ち上がった。
「また天気予報みてたの?なんか今日予定でもあるのー?」
「ん、いや?」
雨の日は彼に会える。
そんなこと、優奈にすら言えるわけがない。だって、きっと信じてくれないから。
「てか、天気どーだったの?」
「これから小雨が降るみたい。でもすぐやんじゃうんだって」
「へえ」
優奈は自分から聞いてきたくせに、さほど興味がないような返事をする。むっとなったけど私も前まではそうだった。むしろ、雨なんて大嫌いだった。
でも、雨の日は彼と会えるから。
家につくタイミングで、ぽつり、ぽつりと雨が降り出す。私たちは小走りに互いの家へ駆け込んだ。少し濡れた制服を着替える時間も惜しく、裏口から家を飛びだす。
向かった先はいつもの空き地だった。
「あ、愛芽!」
彼はそこにいた。傘もささず、濡れた金髪にくしゃっと手を置いて笑う彼が。
「いつからいたの」
「何億年も前から」
そんな冗談を笑顔で言う彼は、きっと太陽の下でも同じように笑うのだろう。透き通った金髪を日光に反射させて、爽やかに手を振ってくるのだろう。
でも、その姿を私は見ることが出来ない。
彼は雨の日にしか現れなかった。
「どうして雨の日じゃないといけないの?
晴れの方がいいでしょ」
1度だけ、まだ出会って間もないころ、水滴を滴らせる葉っぱを眺めていた彼に、問いかけたことがあった。
「愛芽はそう思うの?」
「え?うん」
「俺は、雨が好きだな。てか、晴れは嫌いだからさ」
あめが好き。
それは天気の"雨"で、"愛芽"じゃない。
わかっているけどついドキッとしてしまう。
「逆になんでみんなは晴れが好きなの?」
ふと、背中越しにそんな声が飛んできて私は動きをとめた。なぜだろう。正面から聞かれたことは無かったので戸惑ってしまう。
「ぽかぽかして気持ちいいし、雨だったら嫌だし…」
「なんで雨だったら嫌なの」
「え?」
彼はようやく振り向いた。すっかり濡れて黒色になったパーカーのポケットに手を突っ込み、こてんと頭を傾ける。
「じめじめしてるし、気分が下がっちゃうし、濡れるの嫌だし…」
「んー、たしかに笑」
「えっ、否定しないの?」
彼はもう興味がなくなったように、上を向いて雨を浴びている。目を閉じて、気持ちよさそうに。
「こー目を閉じて雨を浴びてるとさ、嫌なことぜーんぶどうでもよくなってくるんだ。雨が全部流してくれるから」
それを聞いて、思い出す。彼と初めてであった日のこと。
私がお母さんと大喧嘩して、泣きながら家を飛び出したんだっけ。無我夢中で雨の中走って行き着いたのは、この空き地だった。その日も、彼は雨の中野良猫を撫でていた。涙でぐしゃぐしゃで、髪の毛も制服も濡れて見るも無惨なわたしを、何も聞かず隣に置いてくれた。
「てかさ、まだ3時でしょ。学校は?笑」
今日も、あの日と変わらず、興味がなさそうに話しかけてくる。きっと彼にとって私は、ある日突然現れた知らない女の子。それ以上でもそれ以下でもない。
「今日は部活がないから早く終わったの」
「ふーん」
もうすっかり興味をなくした彼は、面白いものを見つけたのかしゃがみこみ、何かを差し出してきた。
「よつばの…クローバー…?」
「そこの隅に生えてた。やっぱ俺、雨の日は運がいいんだ。雨男だなー」
嬉しそうにそう話し、再びキョロキョロ探し出す。私は手の中でクローバーを転がした。
「いいの?もらっても」
「ん?別にいーよ。俺が持ってたところで意味ないから。四つ葉のクローバーなんてなくたって雨が降ればいいんだ」
へんなの。いいかけて、動きを止める。
クローバーの水滴に、差し込んだ光が反射してキラッと光った。
「雨も、わるくないかも」
結局すぐに雨が止んで彼は帰ってしまった。
それから彼は私の前から消えた。
引っ越したのか、なにか理由があってこれなくなってしまったのか。
次の雨の日、空き地には誰もいなかった。名前も聞いていなかったので、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
雨が降れば彼を思い出す。
「あれ、愛芽クローバーのしおりなんて持ってたっけ?」
「うん!てか次社会だよ!急がないと!」
雨の降る廊下で、笑いながら優奈の手をひいて走り出した。 Airiさん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2024年9月22日みんなの答え:1件
かっこよくて、面白くて、優しくて、そして誰よりも雨が好きな君に。
「愛芽ー!かえろー!」
ひょいと教室の後ろのドアから顔をのぞかせたのは、親友の優奈。私はスマホの天気アプリを閉じ、椅子から立ち上がった。
「また天気予報みてたの?なんか今日予定でもあるのー?」
「ん、いや?」
雨の日は彼に会える。
そんなこと、優奈にすら言えるわけがない。だって、きっと信じてくれないから。
「てか、天気どーだったの?」
「これから小雨が降るみたい。でもすぐやんじゃうんだって」
「へえ」
優奈は自分から聞いてきたくせに、さほど興味がないような返事をする。むっとなったけど私も前まではそうだった。むしろ、雨なんて大嫌いだった。
でも、雨の日は彼と会えるから。
家につくタイミングで、ぽつり、ぽつりと雨が降り出す。私たちは小走りに互いの家へ駆け込んだ。少し濡れた制服を着替える時間も惜しく、裏口から家を飛びだす。
向かった先はいつもの空き地だった。
「あ、愛芽!」
彼はそこにいた。傘もささず、濡れた金髪にくしゃっと手を置いて笑う彼が。
「いつからいたの」
「何億年も前から」
そんな冗談を笑顔で言う彼は、きっと太陽の下でも同じように笑うのだろう。透き通った金髪を日光に反射させて、爽やかに手を振ってくるのだろう。
でも、その姿を私は見ることが出来ない。
彼は雨の日にしか現れなかった。
「どうして雨の日じゃないといけないの?
晴れの方がいいでしょ」
1度だけ、まだ出会って間もないころ、水滴を滴らせる葉っぱを眺めていた彼に、問いかけたことがあった。
「愛芽はそう思うの?」
「え?うん」
「俺は、雨が好きだな。てか、晴れは嫌いだからさ」
あめが好き。
それは天気の"雨"で、"愛芽"じゃない。
わかっているけどついドキッとしてしまう。
「逆になんでみんなは晴れが好きなの?」
ふと、背中越しにそんな声が飛んできて私は動きをとめた。なぜだろう。正面から聞かれたことは無かったので戸惑ってしまう。
「ぽかぽかして気持ちいいし、雨だったら嫌だし…」
「なんで雨だったら嫌なの」
「え?」
彼はようやく振り向いた。すっかり濡れて黒色になったパーカーのポケットに手を突っ込み、こてんと頭を傾ける。
「じめじめしてるし、気分が下がっちゃうし、濡れるの嫌だし…」
「んー、たしかに笑」
「えっ、否定しないの?」
彼はもう興味がなくなったように、上を向いて雨を浴びている。目を閉じて、気持ちよさそうに。
「こー目を閉じて雨を浴びてるとさ、嫌なことぜーんぶどうでもよくなってくるんだ。雨が全部流してくれるから」
それを聞いて、思い出す。彼と初めてであった日のこと。
私がお母さんと大喧嘩して、泣きながら家を飛び出したんだっけ。無我夢中で雨の中走って行き着いたのは、この空き地だった。その日も、彼は雨の中野良猫を撫でていた。涙でぐしゃぐしゃで、髪の毛も制服も濡れて見るも無惨なわたしを、何も聞かず隣に置いてくれた。
「てかさ、まだ3時でしょ。学校は?笑」
今日も、あの日と変わらず、興味がなさそうに話しかけてくる。きっと彼にとって私は、ある日突然現れた知らない女の子。それ以上でもそれ以下でもない。
「今日は部活がないから早く終わったの」
「ふーん」
もうすっかり興味をなくした彼は、面白いものを見つけたのかしゃがみこみ、何かを差し出してきた。
「よつばの…クローバー…?」
「そこの隅に生えてた。やっぱ俺、雨の日は運がいいんだ。雨男だなー」
嬉しそうにそう話し、再びキョロキョロ探し出す。私は手の中でクローバーを転がした。
「いいの?もらっても」
「ん?別にいーよ。俺が持ってたところで意味ないから。四つ葉のクローバーなんてなくたって雨が降ればいいんだ」
へんなの。いいかけて、動きを止める。
クローバーの水滴に、差し込んだ光が反射してキラッと光った。
「雨も、わるくないかも」
結局すぐに雨が止んで彼は帰ってしまった。
それから彼は私の前から消えた。
引っ越したのか、なにか理由があってこれなくなってしまったのか。
次の雨の日、空き地には誰もいなかった。名前も聞いていなかったので、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
雨が降れば彼を思い出す。
「あれ、愛芽クローバーのしおりなんて持ってたっけ?」
「うん!てか次社会だよ!急がないと!」
雨の降る廊下で、笑いながら優奈の手をひいて走り出した。 Airiさん(選択なし・14さい)からの相談
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発想がユニーク、!!!!! ヤホォ♪(´ε` )ルルだよ♪♪
[本題]
なんか青春と恋愛が合体したお話みたいなので良いね!!!!
このお話読んでルルも「あぁー、雨もいいかも、、」って思った!!!
主人公の名前も「あめ」なのも工夫されてて素敵!!!!
で!で!!最後よ最後よ!!クローバーのしおりって、もしかして
「彼」からもらったクローバー??!!
ロマンチックすぎない!?!?!?
Airiさんセンスよすぎ!!!!
それでは、ばいちゃ♪♪ ルルさん(大阪・12さい)からの答え
とうこう日:2024年12月23日
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